同一投資対象でも一部の投資信託が信託報酬でETFを下回るなど低コスト化が進んで競争力を失うことに関しては自業自得であり、優勝劣敗で負ける方が悪いので淘汰されれば良いだけのこと。
ETFは販売会社に信託報酬を分け与える必要がないにも関わらず、投信にコストで逆転されるのは努力不足で片付ければ良い話。
しかしながら、新NISAにおいて分配金(配当金)再投資が投資枠を消費するか否かは努力以外の問題であり、制度上ETFが絶対的に不利な立場に追いやられることになります!
投資信託は運用サイドが無分配の方針を貫き通せば、投資対象企業から受け取った配当金は口数を増やすことなく全て基準価額の上昇として反映され、投資家の側から見れば含み益扱いとなりNISA投資枠を消費しまでせん。
一方、ETFは投資対象企業から受け取った配当金から費用を控除した全額を投資家に分配することが義務付けられているので、投資家にとって含み益扱いにしてあげることは不可能です。
もちろんNISA口座であれば投信が分配しなくてもETFが分配しても非課税となるので、その点では有利不利はありません。
決定的に不利になるのは、ETFの分配金再投資(個別株なら配当金再投資)を投資家自身がNISA枠内で行った場合に新規投資額としてカウントされNISA生涯枠の一部を消費してしまうこと。
生涯投資枠は簿価で最大1800万円と決まっているので、分配金も含み益として何年でも繰り延べられる投資信託の方がETFより有利です。
別の言い方をすると、ETFの場合はNISA簿価1800万円分がもたらす1〜4%程度の分配金を特定口座で再投資することになるので、再投資分が将来生み出す利益は課税扱いとなる不利がある。
従来のNISAも同じ不利はあったのですが、年間40万円枠のつみたてNISAがそもそも投信をメインターゲットにしていたこと、一般NISAの非課税期間は5年だったのでETF分配金は致命的な欠点にはなりませんでした。
しかし、新NISAは非課税期間が恒久化されていることと、成長投資枠1200万円分が全体の2/3を占めるので本来ならETFが投信より選好されることも考えられるのですが、分配金再投資が投資枠を消費してしまうなら、私も含めて成長投資枠でも投信で良いかと妥協する投資家も多いと思われます。
そこで、NISA制度におけるETF(個別株)の競争力維持のために日本においてもDRIP制度の導入を真剣に検討すべきではないでしょうか?
米国のDRIP制度は、投資家が自動再投資を選択しておけば証券会社が分配(配当)金が出る都度その対象銘柄に手数料無料で再投資してくれる仕組みと理解していますが、投資家自身が手動で再投資した時にその投資額を新規と見なさずNISA枠を消費することなくNISA枠内で扱うのは難しいように思います。
証券会社が代理で行った自動再投資分はNISA枠内で取り扱いつつNISA枠を消費しないという仕組みの作り込みは可能ではないですかね?
それでもETFなら口数、個別株なら株数がNISA枠内で増えることになり、単純に取得価額 x 口数(株数)=NISA簿価とはならなくなるので管理がややこしくなるとは思います。
新NISAで高配当ETFや個別株の高配当銘柄なら配当(分配)金を非課税で受け取りたいというニーズが強いので再投資の不利はデメリットに感じない人も少なくないとは思いますが、分配金が特に目当てではなく同じ投資対象で投資信託かETFかを選択する時には再投資分がNISA枠を消費してしまうETFは法制度のせいで大きなハンデを負っているように思えます。
来年開始には間に合わないと思いますが、ETFの競争力維持のために制度上の不利を克服して投資信託と同じ競争条件となるよう、新NISAへのDRIP制度取り込みを真剣に検討して頂きたいものです。
