2021年09月20日

金融庁が金融所得一体課税の最優先としてデリバティブとの通算通算を要望も時価評価とセット!?

金融庁が令和4年度の税制改正要望項目として一丁目一番地で「⾦融所得課税の⼀体化」(⾦融商品に係る損益通算範囲の拡⼤)を挙げています。
預貯金まで含めることを視野に入れるものの簡単には通らないので、まずはデリバティブ取引を損益通算対象に加えることを要望しています。
更には暗号資産を含むデリバティブ取引全体が直ぐに加えられることも通らないので、まずは「有価証券市場デリバティブ」を先出しで追加して、執行面の課題を踏まえ段階的に拡大を検討としています。

また訳のわからん用語が使われていますが、「有価証券市場デリバティブ」とは何ぞや?
「有価証券」とは、FX・商品・暗号資産を含まない「上場株式等」「特定公社債」「公募株式投信等」を意味しています。
「市場」とは「店頭」と対になる言葉として使われているので、どうやら「取引所」を意味しているようです!?
店頭FX・CFD・暗号資産を含まずに、取引所取引の中でもFXと商品(コモディティ)は除外して「有価証券」だけはまず現物株との損益通算に加えてくれと。
(何を言ってるかサッパリわからん!)

もう少し具体的に言うと、取引所FXの「くりっく365」は取り敢えず今回要望しないが、株価指数連動の「くりっく株365」は加えてくれ!日経225等の株価指数先物取引も勿論加えてくれ!と要望していると思われます。
(金融庁は具体的なサービスや商品名まで挙げていないので推測です。)

徐々にデリバティブ全体に拡大していくという前提で先ずは取引所の有価証券デリバティブだけでも認められればめでたしめでたし!・・とも言い切れないようです!?
どうも財務省はデリバティブとの損益通算が租税回避に繋がることを懸念しているようですね。

わかりやすいのでFXのドル円を使って例を挙げます。
現物株で100万円の実現利益が出たとします。このままでは約20%の課税が発生します。
そこでFXを使ってドル円の取引で実現利益をゼロにする方法を考えます。
ドル円のレートが100円として同時に売りと買いで各々100万通貨を建てます。(=両建てですね)
レートがどちらに動いてもいいのですが、99円か101円になった時に片方だけ決済すると100万円の実現損を出せます。
含み益が100万円の状態で固定するように決済後直ぐに反対側を建てて両建て状態に戻してやるとその後レートがいくらになろうが含み益100万円のまま動きません。
損益通算が可能になれば、株の実現利益100万円をFXで消し込んで翌年でも10年後でも繰り延べることが出来ます。

特にくりっく365を使えば売りと買いのスワップが同値なので何年持ち越そうがコストは売買時のスプレッドと手数料だけで済んでしまいます。
わかりやすくドル円を例にしましたが、くりっく株365の日経225を両建てしても租税回避は可能になります。
そこで金融庁はなんとデリバティブ取引に時価評価課税を適用することで租税回避防止策とすることを要望の中に書いてしまいました・・orz。

この案が採用されればデリバティブ損益は年末で時価評価されるので、上記の例で挙げたドル円取引の両建てでも年末における実現損益と含み損益の合計は当たり前ですが0円にしかならないので租税回避不能となる訳です。
くりっく株365でも日経225先物でも決済期限があって含み益を何年も持ち越すことは出来ないので影響が大きくないとは言えるかも知れませんが、店頭FX・CFD・暗号資産等にも適用されるとなると大紛糾しそうですね。

今後の展開は読めませんが、取引所だけ損益通算が可能になり店頭はまだ除外している状況で時価評価だけはデリバティブ全体に適用されるなんて事態になれば関係各所が黙ってはいなさそうですね。
デリバティブ大好き個人投資家もそれなら現物株との損益通算は不要だから時価評価の適用はやめてくれという意見もかなりありそうですね。
租税回避を回避するためだけにデリバティブに時価評価を適用するという考え方もかなり頓珍漢であり、それなら現物株も時価評価で統一するのが適切という話にもなりかねません。

そもそも租税回避はブルベアを使った現物株や投信でも信用取引の両建てでも可能であり、デリバティブはより低コストでより容易な手段と言うだけで目の敵にする理由がよくわかりません。
時価評価の導入ではなく両建てを禁止する方向で防止策を考えるべきでしょう。
売りと買いで業者を変えると捕捉は難しいかも知れませんが、そこまで必死にやる人はデリバティブで禁止しても株式だけでもやります。

現物の「つみたて」分散宗派に属して布教活動しているかのような金融庁もデリバティブを敵視しているのではなく、デリバティブ取引が成長資金の供給と家計の資産形成に資するが現状の問題点は個人投資家による活用が限定的と指摘しています。
個人投資家によるデリバティブ取引の活性化に現物株との損益通算は間違いなく資することになりますが、時価評価の導入は間違いなくブレーキを掛ける方向であり相反する施策です。

お役所得意の直線的な理屈の展開と全体を見渡せない部分最適と省庁間妥協の産物により、全体としては個人投資家がデリバティブ取引から手を引いていく逆効果の結果を招かないよう充分な検討と議論が必要でしょう。
一体誰がデリバティブ取引の時価評価を望むのでしょうか?
現物株との損益通算はその大き過ぎるデメリットを上回るだけの効果があるのでしょうか?
財務省が首を縦に振らないから金融所得一体課税を通す為だけにデリバティブ取引に時価評価を導入します???

誰のために何のために何故何をやりたいのか?
お役所の人達って頭が良すぎるのか?いつも基本的なことが抜け落ちちゃうよね。
個人投資家に、国民に資することのない金融所得一体課税なら不要ですよ。

デリバティブ取引への時価評価適用には慎重さと充分な検討と議論が必要であり、損益通算を認めさせる為という理由だけで単なる手段として安易に導入が許されるものではないでしょう。
もう一つ、個人投資家の利便性向上の観点から特定口座でデリバティブとの損益通算を可能にすることも要望していますが、これには誰に反対しませんね。
ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村
posted by 韋駄天太助 at 23:28 | Comment(0) | 全般共通 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

にほんブログ村 為替ブログへ←参考になりましたら一押し。m(._.)m

コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。