金融所得課税に関することだけ拾うと、まず「基本的考え方」の中でこう述べています。
「高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられるため、これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。
その際、一般投資家が投資しやい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う。」
一旦は棚上げされましたが、大綱の中で「検討する」と明記した以上はこの議論から逃れられず金融所得増税の方向で検討されるのでしょう。
これについては色々コメントしたいこともあるのですが、別の機会に回して今回は深く立ち入りません。
また、今後の検討事項として以下が述べられています。
「デリバティブ取引に係る金融所得課税の更なる一体化については、金融所得課税のあり方を総合的に検討していく中で、意図的な租税回避行為を防止するための方策等に関するこれまでの成果を踏まえ、早期に検討する」
金融庁が要望していたデリバティブを中心とした金融所得一体課税については先送りされました。
これについては全体の金融所得課税を見直すのだから性急に一体課税だけを先出しでデリバティブに時価評価導入とか理解不能なことを決められても困るし、今回の「先送り」判断自体は妥当ですね。
さて、今回の本題ですが、大綱の中の「納税環境整備」でサラッと述べられていることに啞然!?
「個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとする」
(注)上記の改正は、令和6年度分以降の個人住民税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
一致させる方向性としては正しいと思うのですが、驚くのはその性急ぶりと節操のなさ!?
11月のエントリー(↓)に書いたばかりなのですが、
(http://financial-free-fx.seesaa.net/article/484374823.html)
平成29年度の税制改正で、上場株式等に係る配当所得および株式譲渡所得について所得税と住民税に異なる課税方式を選択できるようになりました。
(正確にはそれ以前から出来たが基準の明確化がなされた)
更には、令和3年度の税制改正大綱において所得全部を申告不要とする場合には確定申告の手続き内で完結するよう申告書の整備が図られました。
数年前から始まった(明確化された)制度で一年前まではこのままやる気満々だったのに、令和4年度税制改正大綱ではもう塞ぐことに決まっちゃったの?
確かに何故許容されるのかロジカルには説明できないこの穴を放置して増税議論もおかしいのですが、穴を空けたのは投資家ではなく国ですからね。
注記を逆読みすると、令和4年度分までは国税と地方税で異なる課税方式を継続して選択出来るが、令和5年度分(令和6年の申告分)からは不一致は許さない!
(霞が関文学の「経過措置」については講じた結果で令和6年度分からとしたのか?その後も数年間の経過措置を設けるのか?は不明。)
この変更は国税と地方税で異なる課税方式の選択が永続するという前提を置いていた(置いちゃ駄目だけど)人には大きな影響がありますね。
私も譲渡益重視から配当重視に少しずつ移行しようかと考えるところはありました。
課税に関しては、配当の方が優遇されていて譲渡益の方が有利になることは何1つないと思います。
配当課税は
@総合か分離かを毎年自分が選択できる(証券会社にて適切な配当受取方式の選択は必要)
A国内株・投信なら配当控除がある(総合課税選択時)上に
B国税と地方税で異なる課税方式の選択(これ自体は譲渡益にもハンデはない)
という新たなメリットが強力に加わったのがここ数年です。
(更には外国税額控除を含めると配当が譲渡益より全体の税率が高くなるというデメリットも条件付きで解消されています。)
課税上は何1つ有利なことがない譲渡益が配当に勝るのは課税対象額を自分でコントロールできることだけですが、やはりこの唯一のメリットが絶大に大きい。
毎年の配当金もある程度前もって予想することは出来ますが、当たり前ですが勝手に増配や減配で出されたものは受け取るしかなく、譲渡益のように毎年の実現損益を睨みながら含みで翌年に持ち越すなんて融通は効きません。
金融所得課税が変われば、金融商品の選択から投資スタイルにまで影響が及びます。
クーポンか現金かの高度な「新しい資本主義」(?)における金融課税の全体像がまだ見えないので状況を眺めつつですが、令和4年度大綱における国税と住民税の課税方式一致への原点回帰決定を受けて、私の投資スタイルも毎年の課税対象額を確実に増やしてしまう配当は最小限に留めて、譲渡益重視に原点回帰の方向で今のところは考えています。

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